架空の症例で、病気の理解を深め、診療・治療の流れを紹介する目的のシリーズです。
診療カルテ 003
両眼白内障手術
治療経過例
3回目の投与後に滲出性変化は落ち着いた。
その後、相談により、両眼の白内障手術を施行している。
右眼は特に眼底に変化なく経過していた。
左眼はTAEによるアイリーア硝子体注射を施行中で、10週後の評価の際、滲出性変化なく、次回、12週後にアイリーア硝子体注射を施行予定である。
左眼は滲出性変化なく、白内障手術の効果もあり矯正視力は上がっている。
視細胞の障害はのこり、視力には限界があるが、経過良好といえる。
再発に注意しながら、加療継続中である。
加齢黄斑変性について
自覚症状は出やすいが、他の疾患で眼科受診をした際に気づかれることもある。
両眼で見ていると、片目でカバーされて、初期の変化に気づきにくいことはある。
大きく、萎縮型と滲出型に分けられ、滲出型加齢黄斑変性が治療の対象となる。
治療は抗VEGF薬硝子体が基本的に選択される。
萎縮型 | 網膜色素上皮の萎縮による網膜障害 特に治療はない |
滲出型 | 典型加齢黄斑変性
ポリープ状脈絡膜血管症 網膜血管腫状増殖(RAP) |
(危険因子)
全身的要因:高血圧、心疾患、高コレステロール血症、心疾患、酸化ストレス等があげられる。
環境的要因:喫煙、光線曝露があげられる。
(治療)
抗VEGF薬硝子体注射(アイリーア、ルセンティス)光線力学的療法(PDT)
コメント
眼底所見、OCT、造影検査により診断されます。
基本的には抗VEGF薬の硝子体注射になります。
もちろん医師によって異なりますが、アイリーアを第1選択とすることが多いと思います。
光線力学的療法(PDT)は光感受性物質のベルテポルフィン(ビスダイン)を静注し、レーザーを病変にあてて新生血管を閉塞させる治療です。
現在は、抗VEGF薬が効きにくい症例や、RAPなどで併用的に選択されます。
定期的投与 | 毎月、または2か月毎に注射する |
PRN(pro re nata) | 悪化した場合に注射する。 |
TAE(Treat and Extend法) | まず1か月毎に3回投与し、再発がなければ2週間ずつ投与間隔を延長していく。最大12週間延長する。 |
定期的投与は経済的負担があまりに多くなり、無駄な注射もあるかもしれません。
PRNでは悪化してから打つので、やや病状が進行する可能性があります。
TAEは注射の適切な投与間隔を探る方法でもあり、現在の時点では主流とも言えるかもしれません。
しかしながら、最終的にいつまで注射を継続するのかはという問題点はあります。
TAEの具体的な方法も施設で細部は異なる場合もありますが、基本的な方針は以上のような方法をとります。
現実的には、最大12週間あけることに成功した場合、どこかの時点で注射を一度中断し、PRN的加療に切り替える、または再発あればTAEを行うという、初回のみReactiveな投与+TAEという方針にすることが多いです。
もちろん12週毎の硝子体注射の継続を希望される場合もあり、これは患者さんとの相談で方針を決めることになります。
どちらにしても、注射の経済的負担は軽いものではありません。
医療側としては、今後薬価が下がることを期待すると同時に、画期的な薬剤・加療方法が生まれるまでは、できるだけ無駄に注射をしないで、最大効果が期待できる注射方法を検討していかなければなりません。
Treat and Extend法も、導入期という、1か月毎に3回打つ期間がありますが、この導入期のみで、その後、再発なく経過する人もいるわけです。そこで、再発をみてからTAEを行っていく方法など、いろいろと工夫・検討がされております。
しかしながら、この加齢黄斑変性ですが、病気になってからは、もちろん程度にはよるのですが、視力の維持が困難な場合が多いのは事実です。
一番は、やはり予防になります。
禁煙、サプリメント、生活習慣の改善など、出来ることはあります。
どうしようもない病気もありますが、生活習慣の改善で、ある程度リスクを軽減できる病気においては、やはり自己管理が大切となってきます。
くれぐれも自分の体は自分で考えて責任をもって、いたわってあげて下さい。