診療ファイル 005 黄斑円孔  (原因、症状、治療など)

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架空の症例で、病気の理解を深め、診療・治療の流れを紹介する目的のシリーズです。

診療カルテ 005

(症例) 65歳 女性
(主訴) 左眼だけでみると真ん中がぼやけて見えにくいことに気づいた
(既往)特記なし
(生活歴)  特記なし
(所見)
初診時視力:矯正視力 右眼(1.5)左眼(0.2)
眼圧 : 右眼10  左眼11
前眼部:
両眼)角膜透明、前房深い、白内障 grade 1.75 左右差なし。
眼底:
右目 OCT 正常範囲。
左眼 OCT 黄斑円孔 stage3 中心窩の全層円孔形成
     PVDは乳頭周囲では形成されていない
(診断)左眼黄斑円孔(stage 3)
(治療)左眼白内障手術・硝子体手術  L)PEA+IOL+Vitrectomy+ILM removal+20%SF6gas tamponade

治療経過例

いつ頃からかはわからないが、1週間前ぐらいに左目でみたときに真ん中が歪んでみえて、かすんで見えることに気が付いた。様子をみても治らないので受診となった。

相談の上、翌週に入院のうえ、左眼白内障手術+硝子体手術を施行した。

 L)PEA+IOL+Vitrectomy+ILM removal+20%SF6gas tamponade

型どおりに白内障手術を施行、硝子体手術では、PVDを作成して内境界膜(ILM)を剥離した。乳頭周囲の硝子体癒着は強く、眼内攝子を用いてPVDを完成させた。

網膜裂孔形成は認めなかったため、液ガス置換し、20%SF6gas 置換をして終了した。

体位制限は就寝時まで、可能な範囲でうつ伏せとし、就寝時は30°ギャッジアップとした。

2泊3日で退院とし、黄斑円孔の閉鎖を認めた。

1か月後の矯正視力は右眼(1.5) 左眼(0.6)である。

今後も経過観察を必要とする。

 

黄斑円孔について

自覚症状は出やすいが、網膜剥離の範囲が狭いと、たまたま眼科受診をした際に気づかれることもある。

(疫学)

女性に多く、通常は片眼に発症する。発症年齢は約65歳。

片眼に黄斑円孔が発症した場合、他眼の発症率は3~29%と言われている。

 

(診断)

OCTで診断される。

OCTで以下のようにstage分類されている。

stage0 OCTで硝子体と中心窩の癒着を認める。
stage1 傍中心窩のPVDは未完成。中心窩と後部硝子体の癒着を認め、軽度牽引を認める。

切迫円孔とよばれる。軽度の歪みを自覚することもある。

stage2 全層にわたり中心窩の裂孔を認める。円蓋部は中心窩から外れておらず、PVDも起きていない。
stage3 全層にわたり中心窩の裂孔を認め、中心窩ではPVDが起きている。

視神経乳頭周囲ではPVDはまだ起きていない状態。

stage4 全層にわたり中心窩の裂孔を認め、完全なPVDが形成されている。

 

 

(治療)

硝子体手術

硝子体手術で黄斑周囲のILM剥離を行い、ガスタンポナーデを行う。

術後にうつ伏せ等の体位制限を行う。

コメント

第5回目は黄斑円孔です。

OCTにより診断されます。

 

治療は上記の通りです。
非常にまれに円孔の大きさstageにより、自然治癒することもありますが、基本的には硝子体手術の適応になります。

 

硝子体手術により、黄斑部分の円孔部分のある程度範囲の内境界膜(ILM)を剥離します。

その後、一般的にはSF6というガスを眼内に入れて術後にうつ伏せを行います。

最近ではガスを使用せずに、空気でも黄斑円孔閉鎖に問題ないとの報告や、術後のうつ伏せは必ずしも必要ないともいわれ来ています。

体位制限には、これという決まったやり方はありませんが、最近では1日うつ伏せを行う施設が多いようです。

その場合は、短期間の入院、または日帰りで手術を行うこともあります。

9割以上で円孔の閉鎖が認められるようになりますが、閉鎖しにくい黄斑円孔もあります。

円孔径が大きい場合や、近視が非常に強い場合には閉鎖しにくいことがあります。

その場合も、内境界膜移植や、flap形成などの方法で閉鎖させることは可能な場合がありますが、視力予後は不良です。

どちらにしても、早期に発見して治療したほうが視力予後は良くなります。

両眼で見ていると、片目のわずかな異常・変化には気づきにくいので、ときどき片目で見て確認することが重要です。

くれぐれも自分の体は自分で考えて責任をもって、いたわってあげて下さい。

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この記事を書いた人

常識を無視し、権威を無視し、束縛を無視し
専門医など関係なく叩き上げのスキルと己の魂が私の武器
その名はドクターMAX

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